令和5年度講演要旨

 
第1回 9月30日(土)15:00~18:10 
『テーマ:調剤業務のDX化』
15:00-16:30
電子処方箋導入によりみえてきた課題とこれからの薬薬連携
医療法人長久堂野村病院 診療支援部・薬剤科 科長
 荒川 隆之 先生

 本年1月より全国で運用が開始された「電子処方箋」は、医療のデジタル化を促すことにより、質の高い医療サービスの提供や重複投薬等の抑制、業務の効率化などが期待されている。しかしながら、システム普及の遅延や知名度の低さが障害となり、その導入はさほど進んでいない。 本講演では、国のモデル事業として電子処方箋の導入に一足先に取り組んだ施設として、運用までの準備や実際の取り組みなどについて情報共有する機会としたい。


16:40-18:10
近未来に活躍する薬剤師像と調剤ロボット
株式会社ユヤマ 学術部 部長
 森 和明 様

 医薬分業がほぼ完成しつつあるのを機に、薬剤師を取巻く環境は大きく変化をし始めている。それは対物業務を外部に切り出した様式の完成でもあり、その次に対人業務が時代の要請となるのは必定のことだったとも言える。近未来の薬剤師への期待の大きさと、それに応えられる薬学力はこの国の希望であろう。その力を発揮してもらう手段のひとつとしての調剤ロボットについて、近未来の薬剤師像とともに概観してみたい。


第2回 10月28日(土)15:00~18:10 
『テーマ:循環器疾患』
15:00-16:30
脳卒中の外科治療と薬物治療
近畿大学医学部 主任教授(脳神経外科学教室)
 髙橋 淳 先生

 脳卒中治療は、近年大きく変化してきた。脳梗塞超急性期はアルテプラーゼ投与(2005年)、主幹動脈閉塞では機械的血栓回収療法(2014年)が普及し、再発防止薬ではプラスグレルとDOACの登場がトピックスである。脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血はかつて開頭手術が主流であったが、現在半数は血管内治療で治療される。術後の遅発性脳血管攣縮が長年問題であったがエンドセリン受容体拮抗薬クラゾセンタン(2022年)が登場し、状況が一変しつつある。本講義では最新の外科的、薬物的治療について解説する。

16:40-18:10
虚血性心疾患における最新の治療 ~カテーテル治療と薬物治療の役割~
近畿大学医学部 准教授(内科学教室 循環器内科部門)
 上野 雅史 先生

 虚血性心疾患は安定狭心症と急性冠症候群に大別され、安定狭心症に関しては近年、薬剤溶出性ステントの登場により再狭窄の問題が改善され、治療に関しては大きく進歩してきた。しかしながら、急性冠症候群に関しては現代においても、依然として致死性の高い疾患であり いかに発症を予測、予防するかが重要である。
 本講演では、虚血性心疾患に関する病態を冠動脈内画像診断装置の所見を加え、薬物治療の役割、重要性について理解を深めて頂くように最新の情報を含めて解説を行う。

第3回 11月25日(土)15:00~18:10 
『テーマ: がん 』
15:00-16:30
婦人科がんに対する薬物療法
近畿大学医学部 主任教授(産科婦人科学教室)
 松村 謙臣 先生

 本講演では、婦人科がんに対する最新の薬物療法について解説する。進行卵巣がんでは、DNA相同組換え修復異常の有無がPARP阻害剤の感受性に大きく影響を及ぼす。 そして子宮体がんでは、DNAミスマッチ修復異常があれば免疫チェックポイント阻害剤が顕著な効果を示す。またそれ以外の腫瘍でもマルチキナーゼ阻害剤との併用が有効である。 子宮頸がんでも、免疫チェックポイント阻害剤と化学療法の併用療法が有効である。このように、最近は婦人科がんに対する分子標的薬の役割が大きくなってきている。


16:40-18:10
知っておきたい頭頸部癌のいろは
近畿大学医学部 主任教授(耳鼻咽喉・頭頸部外科学教室)
 安松 隆治 先生

 頭頸部癌とは、頭部から頸部までの範囲(眼球、脳実質を除く)に発生する癌を指します。喫煙や過度の飲酒が発症のリスクファクターで、その他に特定のウイルス感染が発癌と関係しています。本講演では予防や早期発見、早期治療の為になすべき事、薬物療法の実際についてもお話しします。