ぱっちり |
いつもは、私の独断と偏見で、〇〇に似ていると紹介しますが、 今回は違います。独断でも偏見でもありません。なぜなら、 日本薬局方という薬についての法律にも まつ毛 と、しっかり書いているので。 |
生薬 センブリ の生薬の性状の項を第18改正日本薬局方から抜粋すると、 『本品は花,対生する葉,茎及び ……(途中省略)…… 水に浸して しわを伸ばすと, ……(途中省略)…… 花冠は5深裂し,裂片は狭長楕円形で, ルーペ視するとき,内面の基部に2個の楕円形の蜜腺が並列し, その周辺はまつ毛状を呈する. ……(以下省略)…… 』 とあります。 ねっ、本当に法律にも書いてあるでしょう。 |
乾燥された生薬ならば、水に浸ししわを伸ばす必要がありますが、 なまの花なら、そのまま観察できます。 なまだと蜜腺(みつせん)は緑色なので(乾燥すると茶色くなり判別しにくい) これも見やすいです。 |
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この蜜腺の周りのまつ毛状の毛の先の形は 植物センブリとセンブリの同属植物のイヌセンブリやムラサキセンブリとの 外部形態学的鑑別に役立ちます。 植物センブリは生薬センブリ(当薬)として使用することができますが、 イヌセンブリやムラサキセンブリは 有効成分が入っている量が少ないので、 生薬センブリとして使うことはできません。 植物の種(シュ)を見極め、生薬を鑑別することは、 薬剤師や薬学研究者にとって大切な知識と能力のひとつです。 手前みそになりますが、そのようなわけで、近畿大学の薬学部では、 最新の機器や設備を使った実習だけではなく、 もう何十年にもわたり、この生薬センブリの外部形態学的鑑別についての 実習をしています。 実習では、まつ毛状の毛だけではなく、 葉や花など性状の項の全ての記載についてスケッチをして確認をしています。 このような実習を実施しているのは 薬学部多しといえど、おそらく本学だけだと思います。 (少し自慢しつつも、多分です) |
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なお、生薬センブリの基原としては認められていませんが、 イヌセンブリもムラサキセンブリも絶滅が危ぶまれています。 環境省レッドリスト2020では イヌセンブリは絶滅危惧II類(VU)の ムラサキセンブリは準絶滅危惧(NT)のカテゴリーに分けられ、 共に都道府県によってはすでに絶滅していると報告されています。 植物としては大変貴重です。 大切に守ってあげてください。 |