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近畿大学 薬学部 薬用植物園

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最新の一枚

しおり 51枚目 2024年1月30日
春夏秋冬 -木のへん-
 冬(日本)


 木偏に季節名を旁(ツクリ)とする漢字が当てられている植物の紹介はこれで一周です。木偏に冬は柊=ヒイラギです。残念なことに当園でヒイラギは育てていませんが、あの表面が少しテカリ、縁には先が鋭い刺となった鋭い鋸歯がある葉をみなさんも思い出すでしょう。日本では関東以西から沖縄の林内に自生しているので見かけると思います。邪気を払うということで庭木として使われることも多く、鬼を追い払うために節分には玄関先に枝を飾る地域もあります。

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 花の少ない冬の季節に白い花をつける常緑の木なので『柊』の漢字が当てられたといわれています。俳句の世界では「柊の花」は初冬の季語とされています。

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 ヒイラギという和名は葉縁の刺に触ると痛いことから、痛いという意味を表す和語「疼(ひいら)ぐ」からついた言われます。現代では「疼(ひいら)ぐ」という言葉はまず使いませんが、確かに医学薬学分野では『痛み』のことを『疼痛(トウツウ)』と呼んでいます。患者さんに向けてはわかりやすい言葉を用い、専門用語は使わないようにするので、『疼痛』も関係する分野を学んだものしか知らない言葉かもしれません。この疼痛の疼の字は疒(やまいだれ)に冬なので、ここから冬に木偏を付けてヒイラギを柊と書くようになったということも有りえるよねと、根拠もないまま勝手な妄想をしています。

 さて、ここで質問です。ヒイラギの実の色は?『とうぜん赤、クリスマスケーキの上にも葉っぱと赤い実の飾りがのっているでしょ、クリスマスリースにも使われるし』と答えた方、それは誤解です。

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 ヒイラギはモクセイ科の学名 Osmanthus heterophyllus で、冬に白い花が咲き夏に黒紫色の実をつけます。

 一方、英語名からホーリーとも呼ばれクリスマスの飾りとしてよく目にする赤い実の植物はモチノキ科に属するセイヨウヒイラギ(別名ヒイラギモチ、学名 Ilex aquifolium)注) で、初夏に花を付けます。

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ヒイラギの葉は対生につく

 ヒイラギとセイヨウヒイラギは花の季節や、果実の色で簡単に見分けがつきますが、花や果実の季節ではなくても比較的に容易に見分けることができます。ヒイラギの葉は対生(1 節に葉が 2 枚付く)で、セイヨウヒイラギの葉は互生(1 節に葉が 1 枚付く)です。

 セイヨウヒイラギと同属植物のヒイラギモチ(別名ヤバネヒイラギモチ、学名 Ilex cornuta注)もクリスマスホーリーの名で流通していますが、これの葉、根、樹皮は解熱などを目的とする中国の伝統生薬で、クコツ(枸榾)と呼ばれています。

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 また、良く似た葉をもつ植物にヒイラギナンテンもあります。メギ科の常緑低木で、学名は Berberis japonica です。ヒイラギナンテンの葉は奇数羽状複葉で遠目にはナンテンに似ていますが、小葉(ショウヨウ;複葉を構成する 1 枚 1 枚)がヒイラギの葉と似ているのでこの和名が付いています。庭や公園によく植えられ、東大阪キャンパスでも植えられています。3月頃に黄色い花をつけ、果実は秋に青く熟します。 

 とりあげた植物 について
★ ヒイラギ  
   Osmanthus heterophyllus  モクセイ科
★ セイヨウヒイラギ (ヒイラギモチ) 
   Ilex aquifolium  モチノキ科
★ ヒイラギモチ(ヤバネヒイラギモチ)  
   Ilex cornuta  モチノキ科
   生薬 クコツ(枸榾・枸骨)
★ ヒイラギナンテン  
   Berberis japonica  メギ科

注)Ilex aquifolium、I. cornuta の和名については色々な考え方があります。特にヒイラギモチとだけ書かれたときに、それがどちらの種を指すのか判断が難しいところです。植物の専門的な図鑑の中にも このHPとは異なる和名で記載するものもありますが、しかし筆者は薬学部薬用植物園に所属しているので、厚生労働省の『医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト』を参考に I. aquifolium をセイヨウヒイラギ、I. cornuta をヒイラギモチとして表記しています。