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近畿大学 薬学部 薬用植物園



しおり 54枚目  2024年6月15日 RECRUIT

自由の道はとても厳しい
 久しぶりに会えたね

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  クサノオウに久しぶりに園内で会え、とてもうれしく思いました。

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  2年前までは当園でも栽培していましたが、昨年から栽培はお休みしタネで保存しています。去年は園内では会えず、とても残念に思っていました。栽培できる面積にも人手にも限りがあり、維持している植物種の全てを栽培展示はせず、効果的に見学してもらうために栽培植物を入れ替えるのは仕方がありません。

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 クサノオウの全草が生薬ハックツサイ(白屈菜)で鎮痛作用がありますが、口にすると呼吸困難や末梢神経麻痺をおこす危険があります。民間では煎液を皮膚疾患に外用するとされますが、いずれにしろ毒性のため使用は難しく(一般の方は使用を避けるべき)、薬草という感は少ないです。しかも、日本では北海道から九州に分布し、草地、道ばた、荒れ地などでみられ、どちらかというと(どちらかといわなくても)雑草として扱われています。

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写真の真ん中付近に見えている葉を千切ってみます。

 しかし、栽培が取りやめられたのを知った時はショックでした。「えっ!植えないのーぉ、まじ?(悲鳴)」というような気持ちでしょうか。なぜなら、クサノオウの葉や茎を千切ると黄色の乳液が出てくる様子を見学に来た小・中・高校生に見せていたからです。

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大きくすると
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  黄色い乳液にはアルカロイドという種類の化合物が入っています。アルカロイドには強い生理作用があるので、医薬品となっている化合物が多くあります。植物中に医薬品の仲間が入っていることを視覚的に感じてもらうとても良い題材だったのですが、いなくなって残念です。そしてお世話になりました。

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  久しぶりに会えて嬉しかったですよ。世間で雑草あつかいされるだけあり、生命力が強い。こぼれた種から元気に芽を出す。囲われた範囲の中で見守られて育てられなくても、その強さで、園内のあちらこちらで花を咲かせていますね(内心では頑張れ‼)。自由を得たかな?でも今の当園では雑草あつかい。花を咲かせた翌日に抜かれたのもいました。HPに載せると早々に駆逐されそうなので、しばらくはこのしおりを載せずにいましたが、とうとう気が付いていたものがすべて抜かれてしまいましたので、HPにあげることにします。

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 もし管理されていない場所にクサノオウを見かけたら千切ってアルカロイド成分を確認して欲しいのも やまやまですが、手につくとかぶれたり炎症を起こしたりすることがあるので、くれぐれも十分に気を付けてください。

 とりあげた植物 について
★ クサノオウ 
    Chelidonium majus subsp. asiaticum  ケシ科