先端バイオ医薬研究室

Ultimate Goal : ヒト恒常性の創護を解明

 ヒトが健やかに生活を営むため、環境などの外的要因や心理的変化などの内的要因の変動に対して一定の状態を保つ機能、それが恒常性です。恒常性については、神経科学や生理学的なアプローチなど多角的に研究されていますが、生体の恒常性のメカニズムの本質は捉えきれていません。これには長期的な研究成果の統合と臨床的な実証が不可欠です。恒常性の研究は、健康とは、老化とは、体調の変化の兆しとは、などといった、健常性を対象とする研究という難しい側面をもちます。 
 「恒常性の維持 ≒ なぜ、健康なのか!?」考えるだけでも難しく思えますね。確かに、恒常性の研究とは哲学的な要素をもつ真理の探究(proof of truth)ともいえます。この科学的な課題は、まさに生命体の根源的な探究なのです。それゆえに、恒常性の探求は多角的なアプローチが集約しているのです。

 私達の研究室では、恒常性の探求の研究素材に、ヒト生体の最大にして最強の臓器である「皮膚」を研究対象にしています。「皮膚」は、それをもつ生物の恒常性を型づくり(創造)、恒常性を維持(守護)するのに必要不可欠なものとして進化の過程で獲得された臓器です。私達はこの皮膚研究を通して「ヒト恒常性の創護を解明すること」を終局目標に掲げ、「ヒト皮膚の恒常性における真理的メカニズムの提唱」を目指しています。
 皮膚をもつ生物はそれなくしては生きられません。事実、皮膚が形成されない突然変異体は全て生まれることができません(分化成熟停止や胎生致死)。さらに皮膚は、その初期の形成過程から生まれ出でて以後に至るまで、生体の生命活動ある限り恒常性を護る最前線で活躍しつづけているのです。
 ヒトにおける皮膚は、まさに心身の恒常性を司る根幹です。日常で曝される外的要因(紫外線や怪我など)からの防御修復や内的要因の影響(心理的要因に誘発される皮膚組織動態)を吸収する「皮膚」、生体の調節役(温度や圧力センサーや神経信号の授受などの機能性)や見た目の美しさ(整容性)を統べる「皮膚」。まさに、恒常性を解剖組織学的に詳細に分析するアプローチとして「皮膚」は至上の研究対象といえます。

 私たちは、皮膚臓器を細胞から組織体、それをもつ個体まで分解して研究し、同時に、細胞から組織から器官から(皮膚間カスケード)個体までの密接な関連性(皮膚支配性恒常性パサージュ)を明示し、その作業仮説を個体レベル実証することで「皮膚が司る恒常性のメカニズム」について研究を進めています。
 私達は、皮膚細胞、皮膚組織、皮膚器官、皮膚臓器を多角的に研究し、ヒト生体の恒常性機能を支配する分子生物学的な理(ことわり)を解き明かすため、現在までに以下の様な研究を進めています。