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近畿大学 薬学部 薬用植物園



しおり 43枚目  2023年4月28日 RECRUIT

春夏秋冬 -木のへん-
 春(日本では)  

 春もあと数日で終わりですが。では、この数か月を振り返りつつ、春の木というとみなさんは何を思い出しますか。春の始まりならウメ、3月末から4月はじめならばソメイヨシノ、やはりこのあたりが一般的なように思います。そのほかにもレンギョウ、アセビ、アケビ、コブシ、サンシュユなどなど数え上げるときりがありません。
 ところが木の右側に春と書くと、皆さんご存知の『椿(ツバキ)』ですね。確かに昔から春を代表する花の一つとしてツバキが日本人に愛されてきたことのあらわれでしょう。しかも春の始まる2月ごろから、4月末の今日にいたるまでの長い期間、ツバキの花を見ることができます。そう考ええると、もっとも春の木にふさわしい植物なのかもしれません。

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ツバキ

 中国で『椿』が表すのはツバキとは全く別の植物、センダン科の落葉高木のチャンチンですが、椿という字が伝わったときに日本にはチャンチンがなく、ツバキのことだと間違えたという説もありますが、やはり、春にふさわしい木としてツバキにツバキの字を当てたと思いたいです。ツバキを表す『椿』の漢字は日本で作られた国字だとの説もあります。『古事記』、『出雲国風土記』、『万葉集』、『源氏物語』にも登場するツバキはそれほど日本人の身近にあった植物なのでしょう(*源氏物語ではツバキの葉を餅に巻いた椿餅が登場)。

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サザンカ

 参考までに、中国ではツバキのことは『山茶』と記し、日本で『山茶花』と書く『サザンカ』のことは中国では『茶梅』と表します。同じように漢字を使用する文化圏だけにややこしいですね。

 とりあげた植物 について
★ ヤブツバキ (ツバキ)
   Camellia japonica ツバキ科
   種皮を除いた種子から得た脂肪油:ツバキ油(椿油) 日局18
★ チャンチン
   Toona sinensis センダン科
★ サザンカ
   Camellia sasanqua ツバキ科
   種皮を除いた種子から得た脂肪油:サザンカ油(山茶花油)