本文へスキップ

近畿大学 薬学部 薬用植物園



しおり 38枚目  2022年12月13日 RECRUIT

「あッ 間違えちゃった!」 では すまない
 後悔する前に、気を付けましょう

 こちらは、冬の最中のこの時期に凛とした美しい花を咲かせているスイセン(ニホンスイセン)です。今は休園中のため みなさまに見ていただけないのが残念です。 原産地は中国ですが、名前にニホンとつくだけあり、日本の環境によく合い育てやすいことにくわえ、他の花が少ない冬(11月~2月)に美しく咲くことから、庭や菜園の端に植えて楽しまれる方も多いようです。

 221213 221213

 ところが、このスイセンをニラと間違えて食べてしまう事故も良く起こりす。厚生労働省によると、過去 10 年間の有毒植物による食中毒の件数が最も多いのはスイセンの誤食によるもので、死亡例まであります。下の写真はニラの花ですが、花があれば間違わないでしょう。

 221213 221213

 しかし、葉はよく似ています。そして、ニラを食べるのは花が咲く前の時期なので気を付けねばなりません。スイセンをノビルやタマネギと間違って食べてしまうケースもあります。

 221213 221213

 ニラの葉は、切ると独特の臭いがあり、スイセンは臭わないか臭っても青臭いので、臭いである程度は区別できます。よく観察すると、抜いたときにひげ根があるのがニラ、球根があるのがスイセンです。スイセンはニラに比べ、葉の幅が広い、草丈が高い、葉が厚いなどの特徴があり、さらに、ニラの葉の断面は楕円、スイセンの葉の断面はⅤ字のため、見分けることは困難ではなさそうです。確かに、上の写真のようにそれと分かったうえで比べると、結構特徴が違うのですが、実際にはなかなか難しいようです。特に、ニラの中にスイセンが混ざっていると、一緒に収穫して食べてしまうのは無理もありません。

  

 間違って食べてしまうのを防ぐために、ニラとスイセンは離した場所に植えましょう。分けて植えているつもりでも、近くに植えると何年か育てているうちに境界が曖昧になってくることが有ります。
 最後に、確実に食用と判断できないものは食べない、採らない、人にあげないのが基本です。これは野草を食べるときにも共通して言えることです。

 とりあげた植物 について
★ スイセン (ニホンスイセン)
   Narcissus tazetta var. chinensis ヒガンバナ科
   鱗茎:スイセンコン(水仙根)外用
★ ニラ
   Allium tuberosum ユリ科
   茎葉:生薬 キュウハク(韮白)
   葉 :生薬 キュウサイ(韮菜)
   種子:生薬 キュウシ(韮子)
   * APG 分類体系ではヒガンバナ科に分類される

* しおり38枚目は『近畿大学薬学部薬用植物園 薬用植物四季便り』column. 6を改訂して掲載しています。