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近畿大学 薬学部 薬用植物園



しおり 39枚目  2023年1月16日 RECRUIT

しめ飾りの ゆくえ
 食いしん坊な私って環境にやさしかった?

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 松の内も明けましたが、みなさまのご家庭ではお正月のお飾りはどのようになさいましたか?といっても、気になっているのはダイダイがどうなったかです。 関西(少なくとも大阪)では15日の小正月までが松の内で、鏡餅は小豆粥にして食べ、それがあけると正月のお飾りは「とんと焼き」で燃やします。もちろんその時にしめ飾りや鏡餅のダイダイも一緒に燃やすのが本来ですが、実は私、子供の時からダイダイが好きなので、ダイダイだけはとんと焼きにせず、ポン酢にしたり、ハチミツと合わせてダイダイ湯にして飲んだりしていました。親は許してくれていましたが、当時の一般的な感覚ではバチ当たりだったかもしれませんね。今なら エコ、SDGs や 4 つのRにも かなっていると言えそうです。まあ、縁起物ですので、文化や風習を守り次世代に伝えると考えると、とんと焼きにすることも大切でしょう。

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 果実を横切りにした写真です。このように果皮がとても厚いうえ、果実も苦みがあり、果汁はとても酸っぱいため、食用として好まれないのか、果物としてはまったくといってよいほど流通していません。私は好きなので、正月飾り用に販売されているものを、果汁をとるために1,2個購入しますが、搾ると他の柑橘類とは異なるダイダイ特有の良い香りの果汁がたくさんとれます。人気が出て、手に入らなくなると寂しいので、本当はあまり人には教えたくないところです。

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花の季節5月にも、昨年までの果実が見られます

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去年の果実と今年の果実が同時に

 当園のダイダイの果実は夏も橙色のままですが、冬に橙色になった果実が夏に再び緑色に戻り、次の冬にもう一度橙色に戻る品種もあります。
 いずれにしろ、『果実を収穫しなければ、今年、昨年、一昨年と3代の果実が同時に木になっているので、代々(だいだい)と呼ばれ、子孫繁栄の願いを込めて、正月の縁起物に使われるようになりました。』
 未熟の果実は生薬キジツ(枳実)、成熟した果皮は生薬トウヒ(橙皮)で、どちらも日本薬局方に収載されているので、ダイダイを取り上げる書籍やwebも多くあり、たいてい このような説明が載っています。関西で生まれ育った私は、ずっと自分のよく知るしめ飾り(しめ縄)が各家の玄関に飾られるものだと思っていましたが、しめ飾りは地域により形も異なり、ダイダイが付いていないしめ飾りが当たり前という地域や、さらには しめ飾りを飾らない地域もありますね。ドラマや漫画でダイダイのついたしめ飾りもご存知でしょうが、ダイダイの説明を読まれても、おそらくあまり実感はないのでしょうね。鏡餅は家の中のことなので 他の地域のことはよくわかりませんが、ダイダイを使わない地域もあるのでしょうか?少し興味がわいています(ありそうな気がします)。

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  ちなみに地域差といえば、松の内があけるのも15日の地域と7日の地域があり、しめ飾りの期間も約1週間異なりますが、さらには一年中各家の玄関に飾っている地域もありますね。とんと焼きもとんど焼きやどんど焼きをはじめ、地域によって呼び方が違います。狭い日本といわれますが、なかなか地域差がありますね。そうそう、植物の地方名もそれぞれ たくさんありますね。

 とりあげた植物 について
★ ダイダイ
   Citrus aurantium var. daida ミカン科
   未熟果実:生薬 キジツ(枳実) 日局18
   成熟果皮:生薬 トウヒ(橙皮) 日局18