本文へスキップ

近畿大学 薬学部 薬用植物園


 

しおり 5枚目 2022年2月7日RECRUIT

季節が変わることを感じる植物
 立春を過ぎても寒いですが、ちゃんと開花します


 暦の上では もうだというのに、いつまでも寒いですね。それどころか日本の各地で記録的な大雪だとか。もっとも、今年に限らず、例年、年末年始よりも2月上旬の方が寒く、雪も多く降ります。にもかかわらず、春が始まる立春は2月4日ごろです。立春は太陽の黄経*)が 315° になる日と定められ、冬至と春分のちょうど中間になります。この日から次の二十四節気である「雨水(2月19日ごろ)」の前日までの期間を立春と呼ぶこともあります。
 比較的 温暖な大阪でも、少なくとも私には、立春のころは まだまだ春とは思えません。太陽の動き(正確には地球の公転)で決められるので仕方がないことですが、雪国の方なら、なおさら季節感と暦の間にずれを感じるのではないでしょうか。

220207

 とはいえ、植物はしっかりと春の訪れを感じとっていたようです。近大 薬用植物園のウメ(Prunus mume:バラ科)が咲きました。やはりもう春ですね。植物は自然は素晴らしいと、感動しました。
 が、よく考えると、現代人で自然を見る感性を育めなかった私だから、春の変化に気づけないだけで、いにしえの人々は植物・動物・虫などの変化をしっかりと感じ取り、それを春の訪れを示すものとしたのでしょう。そして、南北に長い日本ですから、全ての地域で立春の頃に同じような春を感じるのは難しいかもしれませんが、かつての都の周辺の畿内の自然の変化が文学作品などからイメージとして浸透しているのでしょう。というわけで、大阪で立春近くに梅が咲くのは、当然なのかもしれません。
 ウメの開花前線(梅前線)も桜前線のように南から順に北上します。気象庁による観測では、梅の開花は1月中旬に沖縄地方で始まり、1 月中に九州地方から山陰、四国地方、近畿・東海・関東地方の太平洋沿岸に、2 月には山陽から近畿地方、北陸西部、関東甲信に達し、3 月は北陸東部、東北地方南部、4 月から 5 月にかけて東北地方北部、北海道地方に達するとのことです。2022 年の発表では、松山、高松、那覇で前年の 12 月中に梅の開花が認められました。標本木に 5 ~ 6 輪の花が咲いた状態になった最初の日を開花日とするそうです。標本木に品種の定めはないものの、白色のウメ(白梅)が標本木になっているようです。
 ウメは品種も多く、早咲きの品種、遅咲きの品種もあり、長い期間花を楽しめます。白梅、紅梅と花の色も様々で、とても良い香りに包まれます。マスク越しでも香りを楽しめるでしょう。「花見」といえばサクラかもしれませんが、「ウメの花見」もぜひ楽しんでください。万葉集にも多くのウメの歌が詠まれています。写真にある本園のウメは ‘選抜南高‘(P. mume ‘Sembatsu Nanko‘)という品種です。もう一本、‘白加賀‘ (P. mume ‘Shirokaga‘)という品種も栽培しています。冬期休園中のため、本園のウメの花をご覧いただけないのが残念ですが、日本各地に梅の名所は数多くありますので、感染対策をしっかりして楽しんでいただけたらと思います。新型コロナ対策のため今年は開園中止としているところもありますので、事前に確認されると良いでしょう。本学の近くでしたら、大阪城の梅林のウメは見事です。大阪管区気象台が定める大阪府のウメの標本木は大阪城梅林の ‘白加賀‘ です。『生物季節観測用標本 うめ(白加賀) 大阪管区気象台指定』の札が下がっていますので、見つけてみてください。

*)黄経とは  地球からみて太陽が天球上を一年間に一周して動く天球上の大円の軌道(=黄道)を基準とした天球の位置を示す座標のことで、春分点を 0° とし、太陽の黄道上の見かけの運動方向と同じ方向に 360° まではかります。夏至点は黄経 90°、秋分点は黄経 180°、冬至点は黄経 270°になります。