本文へスキップ

近畿大学 薬学部 薬用植物園


 

しおり 7枚目 2022年2月24日RECRUIT

嫌われた (?) 植物
 植物はなぜ "お薬" をつくるのか?の謎が解決した気がしたけれど


 ムクドリが美味しく食べた苗と苗の間に植えられていたのに見向きもされなかった苗は。。。(詳しくは しおり その6
オオッ そこには、

220224220224

ジギタリスの苗が\(◎o◎)/!植えられていたので、つい興奮してしまいました。ジギタリスは全草に毒があります。だから、ムクドリは食べなかったのかも、ジギタリスの毒が植物自身を食害から守る鳥よけとして働いたに違いないという妄想が脳裏をよぎり、嬉しくなってしまいました(すみません、さすがにこれは希望による思い込みです)。
 薬学部出身の私は学生の頃に『生体によってできる、生物に共通する生命現象に直接関与しない天然物(二次代謝産物)は様々な生理活性を持つので、医薬品や新薬開発へのリード化合物として利用されている』『しかし植物はヒトが利用するためにこれらの二次代謝産物をつくっているのではなく、植物を食害から守ったり、昆虫をおびき寄せて花粉を運ばせたり、植物を紫外線から守ったりというように、本来は植物自身のためにつくっている』と学んだので、これぞまさに!!となってしまいました。一時期、ジギタリスの成分であるジギトキシン関連化合物の研究をしていただけに、なおさら嬉しくなってしまったというわけです。
 ちなみに、過去にはジギタリスの葉は生薬「ジギタリス」として日本薬局方に収載されていたことがあり(2005年の第14改正第2追補で削除されました)、当時は劇薬に分類され、今でもジギタリス属植物の葉は「専ら医薬品」の扱いです。強心配糖体のジギトキシンなどを含み心臓の筋肉性機能不全の治療に強心剤とされました。ジギトキシンは治療に有効な量と中毒になる量の差があまりなく、コントロールが難しいお薬です。日本薬局方にはジゴキシンなどのジギトキシン関連化合物(ジギタリス製剤)が今でも収載されています。

 話を食害に戻すことにしましょう。少し冷静になり、ムクドリに食べられた植物と食べられなかった植物をしっかりと確かめると、毒性により食害を免れたとは簡単に言えなくなりました。もちろんジギトキシンが全く関係していないとも言えませんが。食べて死んだムクドリの姿もありませんし、そもそもジギタリスにとっても毒性を発揮するために食べられるのは割に合わないはず。
 続きは  しおり 8枚目 で。

植 物
・ジギタリス (Digitalis purpurea:オオバコ科)
 * DNA解析に基づくAPG分類体系ではオオバコ科ですが、形態や構造に基づく新エングラーの分類体系ではゴマノハグサ科に分類されます